エンジニアに興味を持ち始めたとき、誰もが一度は考える「SE(システムエンジニア)って、結局どんな仕事をするの?」という疑問。
私自身、駆け出しエンジニアとしてこの疑問を抱えたまま手探りで学び始めましたが、そのモヤモヤを一気に晴らしてくれたのがこの一冊。
『新版 SEの基本』ってどんな本?
著者の山田隆太さんは、エンジニア研修やセミナー講演を通じて、日本のIT人材の底上げに取り組んできた人物。そんな著者が、これからSEを目指す人に向けて、「SEの仕事とは何か」「必要なスキルセットはどんなものか」を、丁寧に解説しています。
本書の特徴は、「システムエンジニアの全体像」を掴める構成になっている点です。
テクニカルな知識だけでなく、マネジメント力やヒューマンスキルなど、実務で本当に役立つノウハウが詰まっています。
書誌情報

書名 | この1冊ですべてわかる 新版 SEの基本 |
著者 | 山田 隆太 |
発行年 | 2022年 |
出版社 | 日本実業出版社 |
ページ数 | 304ページ |
章立て
- 0章 SEって、いったい何をする人?
- 1章 SEには、どんなテクニカルスキルが必要か
- 2章 ソフトウェアエンジニアリングを意識したスキルを形成する
- 3章 プロジェクトに必要なリーダーシップとチームワーク
- 4章 プロジェクトを成功に導くマネジメントスキル
- 5章 これだけはマスターしたいヒューマン系スキル
- 6章 SEとしての自覚と心構え
印象に残ったポイント3選
リーダーに求められる「人と目的を動かす力」
システム開発には、技術力だけではなく人間力が必要です。
第3章では、プロジェクトリーダーに必要なスキルについて語られています。中でも印象的だったのは、「メンバーと価値を共有することの重要性」です。
プロジェクトのスタート時には、全員で価値観をすり合わせ、共通の目的を持つことが大切だと著者は述べます(244頁)。これは単に業務の方向性を合わせるだけでなく、「このプロジェクトに関わる意味」をメンバー各自が感じられるようにすることでもあります。
また、モチベーション管理もリーダーの大事な役割。個人のキャリア形成にも配慮し、タスクの割り当て(アサイン)にも戦略的な視点を持つことが必要です(246頁)。
さらに、指示を出すときは「目的を明確に伝える」「成果を評価する」「ポジティブなフィードバックと改善点の指摘をセットで行う」ことが求められます(332頁)。リーダーに必要なのは「命令」ではなく、「導く力」なのだと実感できる章でした。
SEに求められる幅広いスキルセット
SEには次の5つのスキルが求められると、本書は明示しています(387頁):
- ヒューマンスキル(コミュニケーション・チームワークなど)
- 分析スキル(要件定義、データ分析など)
- 設計スキル(基本設計・詳細設計など)
- プログラミングスキル(実装力)
- マネジメントスキル(進捗管理・品質管理など)
SEは単なる「プログラマー」ではありません。顧客の業務を理解し、最適な仕組みを設計・実装し、プロジェクトを推進する「総合職」的な役割です。
また、業務ドメイン(自分の担当する業種・分野)に対する理解も不可欠です。例えば、金融系のSEなら、金融の仕組みや業界動向に興味を持ち、常に学ぶ姿勢が求められます(388頁)。
一歩先の視点を持つ
最終章では、「視点を一段上に引き上げること」の重要性が説かれています。
- プログラマーは設計者の視点で考える
- 設計者はマネージャーの視点を意識する(403頁)
このように、「今の自分の役割」だけに留まらず、常にその先を意識して行動することが、成長の鍵になります。
また、キャリア形成の指針として「ITSS(ITスキル標準)」といった公的フレームワークを参考にすることも紹介されており、自分の将来像を描く上で大変参考になりました!(404頁)

この本はこんな人にオススメ!
✅ SEとしての「全体像」を把握したい方
✅ 技術だけでなく、コミュニケーション力やマネジメントも鍛えたい方
逆に合わないかもしれない人
⚠️ JavaやPythonなど、特定のプログラミング言語のノウハウを深掘りしたい人
⚠️ プロジェクトマネジメントの実践的な手法に特化した情報を求めている人
まとめ:SEという仕事の地図帳のような一冊
『新版 SEの基本』は、SEという職業の役割や求められるスキルを広くカバーした、「SEという仕事の地図帳」のような一冊でした。
駆け出しエンジニアの私にとっても、「技術だけではなく、人間力やマネジメントスキルも重要」という気づきがあり、自分の成長の方向性を考えるきっかけにもなりました。
エンジニアとしての土台を固めたい方や、将来のキャリアに悩む方に、ぜひおすすめしたい一冊です。